解剖学
鍼灸・マッサージの専門学校では、東洋医学、西洋医学両方向から体や健康、病気について学びます。
わたしは、マクロビオティックの学びで東洋医学の面白さに目覚め、クラニオセイクラルセラピーやヒーリングを経験して人に触れながら体へのアプローチをしたいなと思い専門学校に入学しました。
入学時、東洋医学を深く学びたい!その思いがとても強かったです。
なので、どちらかというと西洋医学は副次的に学べる知識、患者さんを傷つけないため、事故を起こさないための基礎知識という気持ちでいました。
ところが、わたしは解剖学が大好きになりました。
それは解剖学の先生、奥村清和先生に出会えたことがとても大きかったです。
先日、鍼灸学校時代の友達から、解剖学が好きだった私に知らせたいと、奥村先生を紹介したyoutube動画が送られてきて、懐かしく思い出しました。
なので、解剖学と奥村先生についてちょっと書いてみようと思います。
奥村先生は、もともと歯科医をされていて、網膜色素変性症を患い、だんだんと視力を失われました。歯科医をやめ、盲学校に入られ、鍼灸師の資格を取られました。その後、私の通った仏眼鍼灸理療専門学校の解剖学の先生になられました。今も、先生を続けておられるとのことです。
先生は、わずかに見えてはおられるものの、おそらくぼんやりとした輪郭の視界で過ごされているようでした。そんな状況で、完璧に授業の準備をされ、教科書の何ページに何が書かれているかも把握しておられました。予め書かれたスライドを映し出して授業しておられましたが、必要に応じて黒板に目を近づけて板書もしておられました。初めて学ぶ私たちにもわかりやすいように、シンプルにかつ要点を抑えた人体構造のイラストを書いてくださいました。資料も、これでもかというくらい準備してくださって、なかなか勉強が追いつかないほどでした。生徒からの質問にも、いつも明快に答えてくださり、まさに惚れ惚れするようなプロ!でした。
解剖学の学びの中で、一番に感じたのは、人の体とは、なんと繊細で巧妙なシステムでできているのかということでした。「生きている」ってそれだけですごいことなんじゃないかと、毎回感動しました。この感動は、施術をする時の軸になっていて、患者さんに接するときに厳かな気持ちにさせてくれます。どんな辛い体の状態にあっても、動かし、巡らし、より良い方向へ向かおうとする、体の生きようとする意志のようなものを感じるのです。
加えて、先生が、真摯に丁寧に、どうしたら私たちにしっかり届くか、授業内容を練り上げておられるのも感じられたので、より一層しっかり学びたいなと思ったのを覚えています。そして、目指すところに妥協なくまっすぐに進む姿勢を見て、かくありたいと思ったものでした。
そして、今回送られてきたyoutubeで、奥村先生がどんな思いで授業しておられたのかがわかり、再び感動しました。明るくてさばけていて何もかも乗り越えておられるように見えた先生の葛藤を目の当たりにして、より一層先生の奥深さを感じました。
人生の中で、人にお会いしてこの人は本当にすごいなぁと確かな感動を覚えたことが何回かありますが、奥村先生もまさにその中のお一人です。恩をお返しすることは出来ないけれど、恩送りで、この感謝を私の関わった方々につなげていけたらなと思います。
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